はじめに
2025年天皇杯、グレコローマンスタイルの全階級王者を対象に試合データを数値化しました。フリースタイルではタックルやスピードが重視されますが、グレコローマンは上半身の組み合いが中心。投げ技やグランドの攻防が勝敗を分けます。本記事では、世界選手権時の解析と同様に6つの指標を用い、グレコローマンならではの“強さの質”を掘り下げます。
ちなみに、世界選手権の記事は以下です!
1分あたりの得点──得点力
攻撃力を示す「1分あたりの得点」で突出したのは田南部選手(63kg級)でした。田南部選手は平均4.66点/分という驚異的な得点力を示しました。
2位はパリ五輪王者の日下選手(77kg級)。2.91点/分と高い数値をマークし、五輪王者として圧巻のパフォーマンスでした。
3位は吉田選手(87kg級)で2.5点/分でした。階級アップ後初めての天皇杯でしたが、相変わらずの腰の強さ、前に出る圧力の強さでした。

1分あたりの失点──隙を見せない守備力
守備力を示す「1分あたりの失点」でトップに立ったのも得点力上位3選手でした。
田南部選手(63kg級)、日下選手(77kg級)、吉田選手(87kg級)の3名が0点=無失点という鉄壁の守備力でした。
全日本の大会で無失点で優勝するのは非常に難しいことだと思います。とくにパッシブによる得点が入りやすいグレコローマンで無失点ということは、試合前半からスタンドで得点するか、前に出て圧力をかけているということでしょう。

1試合あたりの勝点(CPW)──勝ち方の内容
勝ち方を評価する「1試合あたりの勝点」では田南部選手(63kg級)、成國選手(72kg級)、藤井選手(82kg級)の3選手が4.0でトップでした。CPW=4ということは、全ての試合をテクニカルスペリオリティ(に相当する内容)で勝利したことを示しています。
田南部選手と成國選手はフリースタイルでも大活躍した二刀流選手です。いい意味で恐ろしいパフォーマンスです。

1試合あたりの相手勝点(CPL)──徹底したリスク管理
「相手に与えた勝点」を測るCPLでは、田南部選手(63kg級)、日下選手(77kg級)、吉田選手(87kg級)の3名が再び0を記録しました。相手に主導権を渡さず、失点を与えなかったことが数字に反映されています。
前述の通り、パッシブによる失点が発生するグレコローマンにおいてこれだけの数値は、安定した試合運びを反映しているといえます。

Wrestling Quality(WQ)──攻守のバランス
「得点/分 − 失点/分」で算出するWQでも、田南部選手(63kg級)が突出した数値(4.66)を記録しました。日下選手(77kg級)は2.91、吉田選手(87kg級)は2.5と高水準を記録。3選手ともに「高い得点力と1点も失点しない鉄壁の守備」を両立しており、まさに理想の勝ち方といえるでしょう。

Most Successful Wrestler(MSV)──完成度の頂点
最後に、攻守のバランスに加えて勝ち方の内容まで評価するMSVを見てみます。ここでも田南部選手(63kg級)がトップで8.66をマーク。攻撃力、守備力、勝ち方すべてを兼ね備え、今大会のグレコで最も完成度の高い王者であったことを証明しました。このパフォーマンスの選手が二刀流に挑戦しているのが本当に素晴らしいですね。

圧倒的な攻撃力と鉄壁の守備
今回の分析では田南部選手(63kg級)、日下選手(77kg級)、吉田選手(87kg級)の3選手のパフォーマンスの高さが際立っていました。3選手すべてが全試合を通して無失点という鉄壁の守備力。パッシビティによる反則が、フリースタイルよりも入りやすいというルール的ハンディをものともせず、素晴らしい数値を記録しました。前半から常に前に出る意識、高い得点能力が今回の数値に反映されていると考えられます。
おわりに
今回の解析で名前が挙がってきた選手たちの多くは日体大出身の選手たち。やはり日体大のグレコは強いですね。
今回の優勝選手には青山学院大学、育英大学出身の選手たちも含まれています。今後はデータから「出身大学、チームごとの色」も見えると面白いかもしれませんね!
ぜひこれを機に、「データ」という側面からレスリングを考えてもらえると嬉しいです。新しい視点で自分の「強み」や「弱点」を再確認できるかもしれません。
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