はじめに
2025年天皇杯女子レスリングでは、世界トップレベルの女子レスラーがしのぎを削る非常にハイレベルな争いが繰り広げられました。本記事では全階級の優勝者を対象に、グレコローマンスタイルと同様に試合データを6つの指標で数値化し、その意味と背景を解説していきます。
世界選手権の記事は以下です!
1分あたりの得点──積極性を示す攻撃力
まず取り上げるのは「1分あたりの得点」です。これは、試合時間を基準にどれだけ効率的に得点を重ねたかを示す指標で、攻撃の積極性を数値化するものです。
トップは須崎選手(50kg)で、1分あたり2.08点をマーク。久々の天皇杯出場となった須崎選手でしたが、圧巻のパフォーマンスでした。タックルやがぶりなどのスタンドでの得点力に加えて、グランドではローリングや腕とりで得点を重ねました。特定の技で大量得点するのではなく、幅広い技で得点していました。
2位は永本選手(59kg級)で、1分あたり2.07点でした。永本選手も、タックルのみではなく、くぐりやガブリからのバック、ローリングやアンクルなど多彩な技が特徴でした。
3位に池畑選手(65kg級)がランクインしました。スタンドでのタックルが主な得点源でした。こうした選手たちの数字は、単なる勝利ではなく「どれだけ積極的に攻めたか」を示しています。

1分あたりの失点──守備力とリスク管理
次に「1分あたりの失点」です。攻撃力が高くても、失点が多ければ安定した勝利にはつながりません。この指標は、いかにリスクを抑えたかを表します。
特筆すべきは須崎選手(50kg級)で、全試合無失点の0点をマーク。背景には、相手に隙を与えない組手と、場外際でのリスクマネジメントに優れており、圧倒的な安定感が数値として裏付けられました。須崎選手らしい非常に安定した戦いだったと思います。
また、松雪選手(76kg級)も0.11失点/試合という手堅さを見せました。手足の長さを生かした間合いの作り方が、守備力の高さにつながっているように見えます。
3位には、同率で3選手がランクイン。いずれの選手も非常に高い守備力でした。

1試合あたりの勝点(CPW)──勝ち方の“内容”
レスリングでは「どう勝ったか」が評価されるため、勝点制度が導入されています。フォール勝ちは5点、テクニカルスぺリオリティは4点、判定勝ちは3点。これを試合ごとに平均化したのが「1試合あたりの勝点(CPW)」です。
この指標で最も高い数値を残したのは永本選手(59kg級)で、4.0/試合。つまりすべての試合をテクニカルスぺリオリティ(に相当する内容)で勝利したことになります。多彩な技から、テクニカルスぺリオリティやフォールいよる勝利があり、高い勝ち点を記録しました。
2位には須崎選手(57kg級)がランクイン。須崎選手も永本選手同様に、多彩な技で得点しており、テクニカルスぺリオリティでの勝利があったことから、高い勝ち点となりました。
3位には3選手がランクインしました。
チャンピオンのみを解析対象としているため、3を下回ることはありませんが、3を超えるということは、1試合以上フォールやテクニカルスぺリオリティがあったということです。非常にハイレベルな日本の女子レスリングにおいて、相手を圧倒して勝利しているというのは、非常に素晴らしいパフォーマンスだと思います。

1試合あたりの相手勝点(CPL)──“隙のなさ”を測る
「相手に与えた勝点」を数値化したのがCPLです。失点とは似ていますが、勝点制度特有の要素が反映されており、隙のなさを測るうえで有効な指標となります。
ここでは、須崎選手(50kg級)が相手に勝点を全く許さず、0を記録しました。つまり、相手にチャンスをほとんど与えずに試合を支配していたということです。背景にあるのはスタンドでの圧倒的な支配力。組手、がぶりと常に相手に圧をかけ続けた結果だと思います。
2位には永本選手がランクイン。同じく、スタンドでのリスク管理能力が高く、失点の低さが際立った結果だと思います。
3位には3選手がランクインしました・
CPLが低い選手は、常に試合の流れを掌握していることが多く、高いリスクマネジメント能力を持っています。

Wrestling Quality(WQ)──攻守のバランス
「得点/分 − 失点/分」で算出されるWQは、攻撃と守備の両面を数値化した指標です。ここでトップに立ったのは須崎選手(50kg級)で、安定した得点力と鉄壁の守備でした。
永本選手(59kg級)や池畑選手(65kg級)も高い数値を残しており、両選手ともに「どちらか一方に偏らない完成度」にあることが示されました。WQが高い選手は、攻撃力も守備力も高く、試合を優勢にコントロールできる選手と言えます。

Most Successful Wrestler(MSV)──総合力の頂点
最後にMSV。これはWQに「試合の勝点差」を加えて算出する総合指標です。攻撃・守備・勝ち方の内容、すべてを含めて最も完成度の高い選手を評価します。
今大会の女子で突出したのは須崎選手(50kg級)で、MSVは5.83。得点力、守備力、勝ち方の内容、すべてにおいてバランスが取れており、まさに「最も成功した王者」と呼ぶにふさわしい結果でした。今回の50kg級では、ライバル不在の状況ではありましたが、東京五輪王者として素晴らしいパフォーマンスでした。

データが示す“女王たちの強さ”
今回の分析では、須崎選手、永本選手、池畑選手が、すべての指標で上位にランクインしました。この3選手は、高い得点力と鉄壁の守備力を持ち合わせていることがデータからも明らかになりました。まさに安定したパフォーマンスですね。
数字だけでは測れない部分もありますが、データは「選手がどのように勝利を手にしたか」を客観的に明らかにしてくれます。
おわりに
今回の天皇杯からパリ五輪に出場していた選手たちが本格的に復帰してきたこともあり、激戦の連続でした。各指標の数値を世界選手権の数値と比較すると、今回の数値のほうが低い値を示したものが多かったです。つまり、
日本で勝つのは世界で勝つより難しい?
ことを示唆しているのかもしれません。競った試合が多いほど、高い勝ち点をマークするのは難しくなりますからね。この辺りはデータを蓄積して比較していきたいですね!
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