レスリングを続けていると、誰もが一度は思う疑問があります。
「同じ体格なのに、なぜあの選手はあんなに強いのか?」
この疑問に科学的に答えてくれるのが、
García-Pallarés ら(2011) の研究です。
5か国の選手を対象に、世界レベルのレスラーと国内レベルのレスラーを比較し、
“強さを分ける身体能力”とは何かに着目した研究です。
難しい話は避け、端的に何が違うのかをわかりやすく紹介します。
1. 実は、体の見た目はほぼ同じ
研究では
-
身長
-
体脂肪率
-
BMI
これらの値に、エリートとアマチュアで大きな差はありませんでした。
つまり、
見た目の体格=強さ
ではないということ。
強さを分けるのは体の構成要素=質です。
2. 違い①:同じ体重でもその構成(中身)が違う
エリート選手はアマチュア選手より
✔ 除脂肪体重(筋肉量)が 3〜5% 多い
体重は同じでも、その中身=脂肪以外の重さ≒筋肉量が違います。
こうした筋肉量の差は
単純な重さとしての差
のみではなく、
発揮できる能力の差
としても表れます。
3. 違い②:最大筋力の差が大きい
エリートはアマチュアより
✔ 最大筋力(押す・引く力)が 8〜25% 高い
これは、
技の成否にも直結する、出力の最大値がそもそも違うということ。
例えば、
-
タックルで足をキャッチした後の引き付ける力
-
相手との押し合いの中で発揮される力
-
差し合いの圧力
こうした場面で、エリートはより高い出力を発揮することができます。
4. 違い③:爆発的パワーが高い
レスリングを左右するのは、一瞬の動きです。
-
入り際のスピード
-
リフトで持ち上げるときの瞬発力
こうした“瞬間的な爆発”が強いほど試合を有利に進められます。
研究でも、エリート選手は
✔ 上肢・下肢のパワー:14〜30%高い
✔ ジャンプ力:8〜17%高い
と、明確な差が出ています。
5. 違い④:短時間高強度の動きを繰り返す力
レスリングは「短い高強度運動 × 短い休憩」の連続。
この負荷に耐えられるかどうかが勝敗を分けます。
Wingateテスト(全力ペダル運動)では、エリートは
-
ピークパワー
-
30秒間の平均パワー
が明確に高く、さらに
✔ パワー低下が小さい=粘り強い
という特徴がありました。
これは、
-
激しい攻防が続いた時
-
スクランブルの連続
-
試合終盤のスパート
こうした場面での勝負強さ、粘り強さに直結します。
6. 結論:エリートの強さは“正しく鍛えた筋力・パワー・持久力”にある
この研究が示す最大のポイントはこれです。
エリート選手は、
筋力 × パワー × 短時間高強度能力
が、アマチュアレベルの選手より総合的に高い。
それは偶然でも才能でもなく、
長い期間にわたる積み重ね(=トレーニングの質と量)の差です。
技術・戦術の差はもちろん重要ですが、
同じ体重でも実力に差が出る要因のひとつは、
こうした身体能力が背景にあるからです。
レスリングは技術のスポーツであると同時に、高いレベルで戦うためにはそれに応じた身体能力が必要なスポーツ
でもあるという事実を改めて示してくれる研究でした。
📘 参考文献
García-Pallarés, J., López-Gullón, J. M., Muriel, X., Díaz, A., & Izquierdo, I. (2011).
Physical fitness factors to predict male Olympic wrestling performance.
European Journal of Applied Physiology, 111(8), 1747–1758.
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