レスリングで「何が起きたか分からない」をなくす方法|映像遅延再生の活用

レスリングという競技は、攻防の切り替えが非常に速いスポーツです。
試合や実戦形式の練習のあと、選手からよく聞く言葉があります。

「今、何が起きたのか分からなかった。」

とくにスクランブルやスタンドの攻防では、ほんの数秒の間に体勢が大きく変化します。その結果、

・どうして失点したのか
・なぜ相手にバックを取られたのか
・自分はどのタイミングで崩されたのか

といったことを、選手自身がうまく説明できないことも少なくありません。

指導者がアドバイスをしても、選手がその場面を思い出せなければ、技術修正や戦術理解はなかなか進みません。
このような「客観的情報の不足」は、レスリングの学習を難しくしている要因の一つだと感じています。


映像遅延再生装置という方法

こうした課題を解決するため、ある大学レスリング部で
映像遅延再生装置(ディレイ再生モニター)を導入しました。

これは、練習を撮影している映像を数十秒遅れてモニターに表示する装置です。

練習場にモニターを設置することで、選手は

「今の自分のプレー」

その場ですぐ確認することができます。

通常の映像分析では

  • 練習後に動画を見る

  • 編集する

  • 解説する

といった手順が必要になります。

しかし遅延再生モニターの場合、
プレー直後に、自分の動きをすぐ確認できるのが大きな特徴です。

時間を置いた映像分析とは違い、
「今起きたこと」をそのまま振り返ることができます。


導入してみると何が起きたのか

この装置を約2か月間、チーム練習の中で使用しました。
その結果、アンケートに回答した選手の

85%が

「何が起きたか分からない場面が減った」

と回答しました。

さらに興味深かったのは、練習中の選手の行動です。

指導者が声をかけなくても、

「今の場面を見ておきたい」

と選手自身がモニターを確認するようになりました。

また、

「自分で映像を見て修正する習慣がついた」

という声も多く聞かれました。

つまり、指導者からのアドバイスだけではなく、

自分で振り返る学習

が自然に生まれていったのです。


一方で見えてきた課題

もちろん課題もありました。

例えば

・モニターを見すぎて練習の集中が切れる
・モニターの設置場所が難しい

といった点です。

こうしたことから、テクノロジーを導入する際には

環境設計

も重要であることが分かりました。


テクノロジーが変える練習文化

映像遅延再生装置は、単に映像を確認するだけの道具ではありません。

同じ映像を複数人で見ることで、

「あの場面、こうした方が良かったよね」

といった会話が自然に生まれ、
チーム内のコミュニケーションも活発になります。

レスリングのように展開が速い競技では、

自分のプレーを客観的に捉えること

がとても重要です。

映像遅延再生は、その学習を大きく助けてくれるツールだと感じています。


導入方法

現在は、以下のアプリ(有料版)を利用することで、
比較的簡単に同様の環境を作ることができます。

もし実際に導入された方がいれば、
ぜひ感想をコメントなどで教えていただけると嬉しいです。

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参考文献
伊藤奨, 後藤悠太, 原知彰, 塚田聖人, 服部博憲, 射手矢岬, & 彼末一之. (2021). レスリングチームにおける映像遅延再生装置の有効性と導入に向けた問題点の予備的検討-パフォーマンス向上とトレーニング環境の改善に着目して. Research Journal of Sports Performance, 13, 163-180.

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