1. 「試合の方が長く感じる」あの感覚
みなさん、練習より試合のほうが長く感じることってありませんか?
私も現役のころ、そしてコーチになった今でも、そう感じる瞬間が多々あります。
時計の針がゆっくり進んでいるような、あの独特の長さです。
なぜ、3分×2ピリオドのはずなのに、試合はあんなにも長く感じるのでしょうか?
2. 原因はスパーリングの「タイマー設定」にある?
多くのチームでは、
3分 → 30秒休憩 → 3分
という設定でスパーリングを行っているのではないでしょうか?
確かにルール上の試合時間はその通りです。
でも、実はその「3分×2ピリオド」という形式と、実際の試合時間の間にはズレがあります。
3. 実際の試合は、「思っているより長い?」
最近発表された研究(Sciranka et al., 2022)では、2018年世界選手権のフリースタイルレスリング297試合を分析し、
実際の試合時間(タイマー停止中を含む総経過時間)を測定しています。
結果は、平均433秒(約7分13秒)。
つまり、ルール上は6分30秒の試合でも、実際には7分以上戦っているということです。
なぜそうなるか?
理由はシンプルで、試合中は
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審判によるブレイク
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チャレンジや審判団の競技によるポイント確認
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場外による中断
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タイマーや得点の不具合
などでタイマーが頻繁に止まるからです。
一方で、練習中のスパーリングは「ランニングタイム」──つまり、時計が止まらない。
この差が、私たちが感じる試合の長さの正体かもしれません。
この研究では、6分よりも短い時間で試合が終了するフォールやテクニカルスぺリオリティの試合も含まれているため、6分間フルタイムで戦った試合時間のみに着目すると、実際の試合はより長くなるはずです。
今回の研究では、
試合中の「活動時間:休憩時間」の比率は約2.4:1。
実際に動いている時間(活動)は約304秒(5分4秒)、
審判による中断や再開待ちの時間(休憩)は約128秒(2分8秒)。
つまり、試合は3分×2ピリオド(休憩30秒)の計6分30秒ではなく、
7分超の「実質インターバル形式」で進行しているのです。
4. タイマー設定も「試合仕様」にしてみよう
このことを踏まえると、練習のスパーリングでも、タイマー設定を工夫してみる価値があります。
例えば:
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試合の実際の長さに近づけるために「3分15秒 × 2ピリオド」で設定してみる
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中断のタイミングをコーチが意図的に入れ、
審判の注意やポイント確認を想定した「試合テンポの再現」を意識するのも効果的です。
ほんの15秒、30秒の違いでも、
試合後半の疲労感をよりリアルに再現できるかもしれません。
おわりに
練習のタイマーを「ルール通り」にすることは大切ですが、
試合で感じる長さを再現することも、実戦的なトレーニングの一環です。
次にスパーリングを設定するとき、
少しだけタイマーを延ばしてみてはどうでしょうか?
その15秒の積み重ねが、試合終盤の粘りにつながるはずです。
📘 参考文献
Sciranka, J., Augustovicova, D., & Stefanovsky, M. (2022).
Time-motion analysis in freestyle wrestling: Weight category as a factor in different time-motion structures.
Ido Movement for Culture. Journal of Martial Arts Anthropology, 22(1), 1–8.
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