こんにちは。
Wrestling Lab を運営している伊藤奨です。
現在、**2025年12月にKindleで出版予定の書籍『日本レスリングの強さを解剖する』**を執筆中です。
このnoteでは、書籍の制作過程やレスリングに関する知見を、科学の視点からわかりやすく発信しています。
前回は「トレーニングの原理」について解説しました。
今回は、その実践にあたって重要な“5つの原則”について、科学的な根拠とともに整理してみます。
【1】全面性の原則(Principle of Generality)
多様な体力要素をバランスよく養うことが必要です。
レスリングは筋力・パワー・スピード・柔軟性・敏捷性・持久力など、複数の身体要素を統合的に活用する競技です。
一部の能力だけに偏ると、パフォーマンスの限界が早く訪れたり、オーバーユースによる障害リスクが高まる可能性があります。
筋力やパワーといった「見えやすい能力」だけでなく、柔軟性やバランス能力などを含めた総合的な身体づくりが求められます。
【2】反復性の原則(Principle of Repetition)
トレーニング効果は「一度で終わり」ではなく、繰り返しによって蓄積されます。
筋肥大(筋肉量の増加)には、少なくとも8〜12週間程度の継続刺激が必要だとされています。
また、神経系の適応(動作のスムーズさ・効率性)にも反復が不可欠です。
レスリングのように動作のスムーズさが求められる競技では、トレーニングと技術練習を“積み重ねる”ことが、土台としての強さを生み出します。
【3】個別性の原則(Principle of Individuality)
すべての選手に“最適なトレーニング”が同じとは限りません。
遺伝的要因・トレーニング歴・生活習慣・年齢・性別などにより、トレーニングへの反応には個人差があります。
たとえば同じ重さのスクワットでも、ある選手には適切な負荷でも、別の選手には過負荷になることがあります。
特に複数人でトレーニングを行う場面では、「自分に合った重さ・回数・目的」を意識し、画一的ではないプログラム設計が重要になります。
【4】意識性の原則(Principle of Consciousness)
「なぜこのトレーニングをやっているのか?」を理解し、意識して行うことで、効果が高まります。
たとえばスクワットやプランクといった基本的な種目でも、目的や使っている部位を理解したうえで行うことで、姿勢や動きに対する注意が高まり、質の高いトレーニングにつながります。
また、レスリングの補強においても、
「この動作は、リフトで立ち上がる時に必要な下半身の力に関係しているかもしれない」
「この姿勢は、構えの安定性の向上に活きるかも」
といったように、競技での使い方をイメージしながら行うことで、トレーニングへの意味づけが生まれ、集中力やモチベーションが高まります。
ただし、補強と競技動作を“完全に一致させよう”としすぎるのは危険です。
あくまで「ヒントとして結びつけて考える」ことが、意識性を高める手段として有効だと捉えてください。
まずは、“どの部位を鍛えているか”と“何のためのトレーニングか”を明確に意識することから始めましょう。
【5】漸進性の原則(Principle of Progression)
身体は“慣れる”。だからこそ、段階的に負荷を上げていく必要があります。
トレーニングを続けていると、身体が刺激に適応し、同じ負荷では効果が得られにくくなります(=停滞期)。
このため、負荷の強度・量・頻度を段階的に上げていく(漸進的過負荷)ことが求められます。
ただし、無理な負荷設定は怪我のリスクを高めるため、「少しきつい」「前回より+1〜2回」など、適切な調整が鍵となります。
◆まとめ
トレーニングには“原理”と“原則”があります。
今回紹介した5つの原則は、トレーニングを安全かつ効果的に行うための基本ルールです。
ただがむしゃらにやるのではなく、自分の身体と目的に合った“意味のあるトレーニング”を積み重ねていくことが、レスリングの競技力を底上げします。
次回は「1RMとは何か?──トレーニング負荷の設定法」について解説予定です。
📘 『日本レスリングの強さを解剖する』は2025年12月にKindleで出版予定です。
📱 SNSでも情報発信中!
X(旧Twitter) → @wrestlinglab_jp
Instagram → @wrestlinglab_jp
最新のnote更新や、制作裏話、レスリングに関する論文なども紹介しています!
📖 書籍『レスリングを探求する』2026年9月 Kindle出版予定
発売通知はLINEでお届けします→
🌐 詳しくはこちら→
(参考文献:スポーツ指導者に必要な生理学と運動生理学の知識)


コメント