こんにちは。
wrestling labの伊藤奨です。
いよいよ春らしくなってきましたね。2年前くらいからこの時期になると鼻水とくしゃみに悩まされておりましたが、今年は目もかゆくなってきました。完全に花粉症ですね。(笑)
花粉症の先輩の皆様、良い対策があれば教えてください。(笑)
さて、体調管理もアスリートの課題ですが、今日はそれ以上に重要な『頭の整理』についてです。
前回は書籍の執筆状況をご報告しましたが、
最近、書籍の執筆の合間に
育英大学総監督柳川美磨先生、パリオリンピック金メダリスト櫻井つぐみ選手、元木咲良選手の著書
「親心」の指導が生んだ、ふたつの金メダル 育英大レスリング部 強さの秘密
を読みました。
こちら大変勉強になりました。
・柳川先生の指導論
・育英大学レスリング部の歴史
・2人の金メダリストのメダル獲得までの過程
などなど。レスリング関係者はもちろん、レスリングに親しみのない人にもぜひ手に取っていただきたい本です!
今日はこの本の中で、「すごいな!」と思った点を、科学的根拠と照らし合わせながら私なりにまとめてみようと思います。
40冊の練習日記
突然ですが皆さんは練習日記をつけていますか?
先ほどの本の中で、元木選手の練習日記についての記述がありました。
もともと新聞やニュースなどで「元木選手が練習日記をつけている」ことは知っていましたが、その量に驚きました。
何とこれまでに
40冊
もの練習日記をつけてきたようです。
私自身も現役時代に練習の振り返り記録をつけていたことがありましたが、メインは毎日の練習の振り返りというよりも試合での反省点をまとめることでした。毎日日記をつけるというよりも、「気になったことがあれ書く」くらいの感覚で、毎日必ずつけるほどではありませんでした。元木選手は必ず日記を書くようで、オリンピックチャンピオンになる選手の継続力、分析力はとてつもないなと思いました。
練習日記を書く理由
書籍内で元木選手は、練習日記を書く理由を以下のように話しています。
言われたことを忘れないようにするため。
(中略)
練習での出来事や教えてもらったこと、自分で気づいたこと、次の練習で意識することなどを毎日1ページに記しています。一日の終わりに書く日記のようなもので、自分の考えや戦い方を言語化することによって頭の整理につながっています。
一般的にこのような振り返り作業は「リフレクション」の一つといえます。
リフレクションとは
「学習した内容を評価し、過去の知識や経験を自分自身の向上のために適応させる能力の程度」
であり、以下のような効果があります。
経験の未来への活用: リフレクションを行うことで、以前の知識や戦略を将来の行動に役立てることが可能になります。単に振り返るだけでなく、獲得した知識やスキルを深く理解し、それをさまざまな異なる状況に応用(適応)させるためのプロセスです。
学習効率の向上: リフレクションは、自分の潜在能力を最大限に引き出すために必要な、競技固有の特性の発見を促進します。
つまり、リフレクションとは
「過去の経験から教訓を引き出し、それを未来の自分を向上させるための『知恵』へと変換する知的な作業」
とも言えます。
ジュニアアスリートにおけるリフレクションの重要性
国際レベルのジュニアアスリートと国内レベルのジュニアアスリートを対象とした面白い研究があります(Jonker et al., 2010)。
この研究は
12歳から16歳の才能あるジュニアアスリートを対象に、競技レベルや競技種目の違いによって「自己調整学習スキル」にどのような差があるかを調査すること
を目的に実施されました。
自己調整学習とは、
学習者が特定の課題を習得し、向上するために、自分自身の学習をどの程度コントロールしているかを指します。
自己調整学習スキルとは以下の6つのスキルから構成されます。
-
計画(Planning)
-
自己モニタリング(Self-monitoring)
-
評価(Evaluation)
-
リフレクション(Reflection)
-
努力(Effort)
-
自己効力感(Self-efficacy)
研究の結果、上記のように数ある自己調整スキルの中でも、「リフレクション」こそが国際レベルのジュニア選手と国内レベルの選手を分ける決定的なスキルであるという点が明らかになりました。
リフレクションによって自分の学習プロセスや過去のパフォーマンスを振り返ることで、獲得した知識やスキルをより深く理解し、さまざまな状況に適応させることが可能になると述べられています。
憧れの元木選手に近づくには?
おそらく元木選手も練習日記を通して、練習で得られた経験を単なる「経験」として放置するのではなく、自分なりにその経験を考察し「知恵」として昇華していたのではないかと考えられます。
日記をつけるのには高いお金は必要ありません。今日からすぐにできると思います。練習時間に練習に集中するのはもちろん大事です。しかし、多くの選手が練習中には当然練習に集中していると思います。そうなると、差が出るのは練習以外の時間でしょう。練習帰りの電車や車の中でその日の練習を振り返り、言語化し、頭の中を整理する時間をつくってみてはどうでしょうか?
(なんてこと偉そうに言っていますが、現役時代の自分に言ってやりたいですね…。)
おわりに
今日触れた内容についても、もう少し細かく書籍内で触れています。
今年中の出版に向けて鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ちください。また、今日紹介した書籍↓もレスリングファン必読分だと思いますのでぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?
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参考文献
LAURA JONKER, MARIJE T. ELFERINK-GEMSER, & CHRIS VISSCHER, Differences in self-regulatory skills among talented athletes: The significance of competitive level and type of sport’, Journal of Sports Sciences, 28: 8, 901 — 908 To link to this Article: DOI: 10.1080/02640411003797157
URL: http://dx.doi.org/10.1080/02640411003797157


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