試合結果を見るとき、つい勝ち負けや順位だけに目が行きがちですよね。でも、「どうやって勝ったか」「どれだけ相手を圧倒したか」は、順位表だけでは見えてきません。
今回は2026年アジアシニア選手権の結果を、MSV(Match Superiority Value) という指標を使って振り返ってみます。
MSVってどんな指標?
MSVは、試合の「支配度」を数値で表すための指標です。
MSV = WQ + CP_diff
少し説明しますね。
-
**WQ(Wrestling Quality)**=(獲得得点 − 失点)÷ 試合時間(分)
→ 1分あたりどれだけ得点差をつけたか、いわば「得点効率」を示します -
**CP_diff(Classification Point差)**=(獲得クラシフィケーションポイント − 失点クラシフィケーションポイント)÷ 試合数
→ クラシフィケーションポイントとは、フォールやテクニカルフォールなど勝ち方の「質」に応じて付与される点数です。その差を試合数で割ったものがCP_diffです
つまりMSVは、「得点でどれだけ圧倒したか」と「どれだけ質の高い勝ち方をしたか」を合わせて、試合全体の支配度を表しています。
今回は各スタイルの金メダリストを対象に算出しました。
まず3スタイルを並べて見てみると
全階級の金メダリストの平均MSVを比較すると、こんな結果になりました。
| スタイル | 平均MSV | 平均WQ | 平均CP_diff |
|—|—|—|—|
| 女子(WW) | 6.56 | 3.15 | 3.42 |
| グレコローマン(GR) | 4.71 | 1.50 | 3.21 |
| フリースタイル(FS) | 4.49 | 1.68 | 2.82 |
女子が突出して高いですね。その主な要因はWQ、つまり得点効率の差です。女子は1分あたりの得点差が他の2スタイルの約2倍になっています。
おもしろいのはグレコローマンで、WQは最も低いのにCP_diffはフリースタイルより高くなっています。「得点は少ないけれど、勝ち方の質は高い」というグレコローマンらしい競技の特徴が、数字にも出ているようです。グレコローマンのテクニカルスぺリオリティが8点というのも関係しているかもしれません(女子、フリーは10点)。
女子レスリング:Hongの数字がすごすぎる

Hongの数字、ちょっと異常です。
試合時間わずか2分33秒で30得点、失点ゼロ。WQは11.69なので、1分間に約12点差をつけ続けた計算になります。今大会の全スタイルを通じて最高値でした。
「支配した」というより、「相手が何もできなかった」という表現の方が近いかもしれません。
フリースタイル:イランが上位を独占

TOP3がすべてイランでした。団体でも優勝したイランが強さを見せつけました。
グレコローマン:「得点より勝ち方の質」

グレコローマンの面白いところは、WQよりCP_diffが相対的に高い点です。
GANIEVはWQ 3.07に対してCP_diff 4.33、MIRZAZADEHはWQ 2.20に対してCP_diff 4.00。得点効率は他スタイルのトップより低いのに、勝ち方の質を示すCP_diffは高水準を保っています。
グレコローマンは競技の性質上、得点そのものが入りにくい。だからこそ「どう勝ったか」がMSVにより大きく影響してくるのかもしれません。
日本人チャンピオンの数値は?
日本人金メダリストのMSV
【女子】
2位 OZAKI Nonoka 62kg 8.48
4位 SUSAKI Yui 50kg 6.55
5位 UCHIDA Sowaka 55kg 6.10
【フリースタイル】
4位 YOSHIDA Arash 97kg 4.49
7位 AOYAGI Yoshinosuke 74kg 3.74
9位 GHAREHDAGHI Keyvan 79kg 2.63
この数値は厳しいトーナメントに入れば入るほど、低くなる傾向にあります。すべてのチャンピオン、素晴らしいパフォーマンスでしたが個人的PFPはYOSHIDA Arash(吉田アラシ)選手(97kg級)でしょうか。五輪チャンピオンをはじめ世界の競合たちを破り堂々の優勝。この階級での日本人選手の優勝は快挙だと思います。関連記事↓
女子はこれまで通りの強さを見せつけ、それに加えて青柳選手やガレダギ選手といった中・重量級の男子選手が優勝することは本当にすごいことです。ガレダギ選手も吉田選手と同様にパリ五輪王者に勝ってますからね。日本の強さが際立った大会でもあったかと思います。
まとめ
勝敗だけでは見えない「試合の中身」を読み解く一つの視点として、引き続き大会ごとに数値を追っていきたいと思います。
皆さんのPFPをぜひコメント欄にご記入ください!!!!
データは2026年アジアシニア選手権の公式結果をもとに集計しました。対象は各スタイルの金メダリスト(全10階級)。
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